記事タイトル一覧
第48号 令和3年6月号
*掲載の写真はご本人の了承を得ております。
脳卒中 それは一分一秒を争う病気!!
脳卒中チームは、みなさまの脳を守るため全力をつくします
写真1:脳神経外科チ-ム
みなさん、こんにちは。JCHO東京新宿メディカルセンター脳卒中チームの中川です。今日はみなさまと一緒に、脳梗塞という病気について勉強してみたいと思います。
私(42歳)が生まれる以前は、脳卒中が日本人の死亡原因の第一位でした。しかし先人の方々のご尽力により、1980年代から脳卒中に罹患する患者さまの数は激減しました。その理由として考えられるのは、我々の生活スタイルの大きな変化、特に健康食への志向と医薬品の進歩です。よって現在は癌や心臓病の方が死亡率としては高くなりました。しかし、近年の脳卒中の内訳を注意深くみてみると、出血の数は減りましたが、実は梗塞の数が増加していることに気づきます。
※脳出血は、脳溢血とも呼ばれ、脳の血管が破れて脳の中に出血し、血液の塊が脳細胞を圧迫して壊してしまう病気です。
※脳梗塞は、脳の血管が詰まり脳細胞が死んでしまうことで、麻痺や感覚障害を発症します。
一分間に二百万もの脳細胞が死滅してしまう脳梗塞
写真2:カテ-テル手術チ-ム(脳神経血管内治療科)
脳梗塞になると、人体は様々な障害にさらされます。手足が動かなくなる、感覚が麻痺する、言葉が出にくくなる、計算ができなくなる、あるいは自分が病気であることを理解できなくなる場合もあります。でもそれはなぜでしょうか。
脳細胞は、ひとたび脳梗塞がおきると、1分間におよそ200万個が死滅してしまうと言われています。また近年の様々な研究から、一度ダメージを受けた脳細胞は、残念ながら復活することが難しいことがわかっています。私の祖母も脳梗塞を患い、30年以上もの間、右半身麻痺と言葉がほとんど出ない状態が続き、一生を終えました。
脳細胞をひとつでも多く守るための治療
写真3:脳神経内科チ-ム
一度ダメージを受けると復活が困難で、なおかつ1分間に200万個もの細胞が死滅してしまう脳梗塞という病気は、脳を守る医者にとって大敵です。このような患者さまが救急車で搬送されてきた場合、いつも笑顔の中川から笑顔はなくなり、1分1秒を争う戦士に変わります。我々が1分という時間を無駄にしてしまったら、大切な患者さまに取り返しのつかない後遺症を残してしまいかねないからです。
脳梗塞の治療には様々なものがありますが、その一つにtPAという薬があります。脳梗塞発症から4.5時間以内(注. それ以降でも使える場合もあります)であれば、詰まってしまった血の塊を溶かしてくれる可能性を持つ薬です。しかしこの薬も万能ではなく、元々の病気によっては使えない場合があり、太い血管や動脈硬化の血管にできた血の塊に対しては、ほとんど効果がありません。
血栓回収術(カテーテル治療)
図1
tPAという薬が効いてくれなかった場合、少し前まではもうこれ以上脳細胞を救う手段がありませんでした。しかし近年の医学の進歩により、血管の中に固まってしまった塊を、カテーテルという柔らかいチューブを使って取り除く血栓回収術(図1)という画期的な治療法が確立しました。ただしこの治療を行えるのは、特別なトレーニングを経て合格した、資格を持つ医師だけです。でもご安心ください。当院の脳血管内治療科の医師は全員がこの資格を取得しており、患者さまは24時間365日このカテーテル治療を受けることができます。
当院の脳卒中チームについて
写真4:リハビリチ-ム
手足に麻痺が生じたり、身体に不具合を起こす病気は脳梗塞の他にもたくさんあります。当院ではその全ての病気に対して最適な治療が提供できるように、手術を行う脳神経外科チーム(写真1)、カテーテル治療を行うカテーテル手術チーム(写真2)、内科的な治療を行う脳神経内科チーム(写真3)が揃っています。また、不具合が生じた体をリハビリで回復させる心強いリハビリチーム(写真4)があります。リハビリチームでは、患者さまが入院された直後から加療を開始しています。当院が回復期および療養病棟を完備することで、脳卒中後のリハビリ療養加療が途切れなく提供されますし、社会制度を強力にサポートするスタッフ(写真5)が充実していることで、脳卒中後の障害者手帳や介護申請のみならず、自宅の改装や車椅子の手配などをサポートすることも可能です。
脳卒中チームは、みなさまの脳を守るため全力を尽くします
写真5:サポ-トチ-ム(患者サポートセンター)
不幸にも脳卒中が生じてしまったら、後遺症はどのくらい残るだろうか、今後の生活はどうなってしまうのか、費用はどれくらいかかるのか…、様々な心配が患者さまやご家族を覆うことでしょう。
我々は、そのお気持ちを理解し、寄り添う覚悟と準備ができています。JCHO東京新宿メディカルセンター脳卒中チームは、患者さまを自分の家族と考え、みなさまの脳を守るために全力を尽くします。
日頃の健康管理も、脳卒中の予防にはとても大切です。特に高血圧・脂質異常症(高脂血症)・糖尿病の患者さま、またタバコを吸われる患者さまも脳卒中に罹患するリスクが上昇してしまいます。予防も大切な治療です。いつでもご相談ください。
(脳神経血管内治療科 中川大地)
新型コロナウイルス感染症流行下の救急外来
(2021年2月)
写真1
写真2
写真3
多くのマスメディアで医療崩壊の危険性が叫ばれていますが、救急外来で勤務をしていると医療崩壊の足音が、すぐ近くまで迫ってきていると実感します。「3時間搬送先が決まりません」「20病院に受け入れを断られました」といった救急隊の方の悲鳴に近い搬送依頼も日常茶飯事で、多摩地域や県境をまたいでの搬送例もあり、具合が悪くて救急車を呼んだにも関わらず搬送先の病院がなかなか見つからず、やっとのことで当院に搬送されてくる患者さまが後を絶ちません(写真1)。
新型コロナウイルス感染症の難しいところは、無症状の感染者の方がいるということです。発熱や、息苦しい、体がだるいなどの症状があれば、医療者も身構えますが、まったく無症状の方が怪我や脳卒中で運びこまれることもあります。そういった際に対応を誤ると、新型コロナウイルス感染症の患者さまが紛れ込み、医療機関での院内感染が起こります。またPCR検査も万能ではなく、1回目陰性でも、2回目に陽性になると言ったケースも見られます。
この1年間、我々も多くのことを学び、患者さまに安心して受診していただけるよう、そして院内感染を発生させないよう対策をとってきました。診察にあたるスタッフは感染対策を徹底し、受診・搬送される患者さまはすべて新型コロナウイルス感染者かもしれないという前提で診療にあたっています(写真2)。救急外来のベッド数を減らすことにはなりましたが、患者さま同士の距離を保つために、ベッドの間隔を広げ、感染対策が行いやすい環境にし、発熱や呼吸不全など新型コロナウイルス感染症が疑われる患者さまは陰圧装置を備えた個室で診察にあたります。1時間程度で結果がわかるPCR機器検査(写真3)も導入されており、救急外来からの入院患者さまには全例にPCR検査を施行させていただいています。ただ入院時の検査が陰性でも感染が完全には否定できない状況では、感染対策のため個室で経過を見させていただいています。
最後に、皆さま『安全』と『安心』という言葉を聞いたことがあると思います。『安全』は科学的根拠によって確立されたものに対して、『安心』は主観的なものです。似ている言葉ではありますが、意味合いは全く異なります。新型コロナウイルス感染症も当初は未知のウイルスでしたが、感染様式や防御策、感染しやすい状況などが徐々にわかってきて『安全』は確立されつつあるかもしれません、しかし皆さまの『安心』を得るのはしばらく先かもしれません。我々医療に携わる人間ですら『安全』とわかっていても心の中の不安は拭いきれないでいます。しかし、その不安の中、全職員が一丸となって、地域の皆さまの健康を守れるように日々奮闘しています。
(救急総合診療部 東原 和哉)
地域の薬局との連携
地域の薬局との連携が始まっています
みなさまが地域の保険薬局でお薬を受け取る時、最近は薬の説明だけでなく、「体調いかがですか?」「検査の結果はいかがでしたか?」など、声をかけられることが多くなったのではないでしょうか?
ここ十年くらいでお薬手帳の普及が進み、他の病院・クリニックで処方された薬も分かるようになりました。その結果、患者さまの体調を把握することが容易になり、また類似のお薬が複数の医療機関から重複して出されることも避けられるため、大変役に立っています。
しかし、今までの使い方では不十分な点もありました。処方の理由や副作用の有無などの情報が十分とは言えず、その都度患者さまに確認をする必要がありました。また入院中の処方が記載されていないことも多く、入院中の状態や投薬内容が薬局には伝わりにくいのが現状です。
そこで、最近では、地域で患者さまの情報を共有していく“地域連携”の取り組みや、“かかりつけ薬剤師”制度が推奨されています。当院でもそれらを意識した取り組みを少しずつ始めており、外来での検査結果の配布もその一環です。薬剤部としては、退院時指導の際に処方の経緯や注意点などをお薬手帳に記載したり、薬局宛てのお手紙を作成したりすることもあります。地域の保険薬局に対しては、副作用対策などを共有するため、ホームページを活用した情報共有や、地域薬局と病院との合同研修会なども開催しています。
不安なく治療を受けるためには、まずは患者さま自身が、ご自分の病気・薬について理解していただくことが大切です。そのために、私たち薬剤部では、患者さまが何か疑問を持った時、困った症状が起きた時、診療科や医療機関を問わず、お薬を通して全体を確認できる心強いしくみを目指し、今後も取り組んでまいります。
(薬剤部 藤掛沙織)
お知らせ
患者・利用者満足度調査を毎年実施しています。
当院の設置母体である独立行政法人地域医療機能推進機構(略してJCHOジェイコーと読みます)では、サービス向上のため、57のすべての病院において、年1回「患者・利用者満足度調査」を実施しています。当院も、2020年度は、入院・外来ともに10月に実施し、皆さまにご協力をいただきました。誠にありがとうございました。
集計結果は、当院ホームページで公開しております。またその結果を当院の患者・医療者パートナーシップ委員会で検討し、改善を図っております。これまでの取り組みとしては、食事のメニュー・照明・待ち時間などの検討・改善を実施いたしました。
当院では、今後も地域の皆さまに安心してご利用いただけるよう、感染対策や医療・介護の質の向上につとめてまいります。
(総務企画課 山田有希子)
当院の働き方改革
看護師のユニフォームが変わりました!
看護師のユニフォームといえば、白衣とナースキャップが定番です。これらは1854年頃にフローレンス・ナイチンゲールが導入したと言われています。当院ではこれまで看護師のユニフォームのモデルチェンジを3回行っていますが、今回は2019年4月に施行された「働き方改革関連法」を受けて、勤務時間帯によってユニフォームの色を替える「二色制」を導入しました。
【新しいユニフォーム】
日勤者のユニフォームは白色です。襟元のカラーは個人の好みに応じて 4色の中から選択できます。看護師が自由に襟元の色を選べることで、仕事に対するモチベーションにつながると考えています。
夜勤者は患者様が就寝される時間帯に勤務するため、色合いを抑えた紺色のスクラブタイプになりました。着心地や機能性も重視しています。
【二色制による変化】
勤務時間やチームワークに対する看護師の意識の変化がありました。「日勤・夜勤者がわかりやすくなった」「業務時間を気にするようになった」などの声がありました。また、勤務時間外に医師などの他業種から声をかけられることが少なくなり、業務の連携がスムーズになりました。その結果、看護師の残業時間が減り、業務効率の改善につながっています。二色制ユニフォームの導入は、医療従事者の意識を変化させることによって、看護師の労働時間短縮を目指す、働き方改革の取組の一つです。今後も看護師の職場環境の改善に努めて参ります。
【番外 彩り豊かなユニフォーム】
カラフルなスクラブタイプのユニフォームを着ている「特定行為研修修了看護師」をご存じでしょうか?インシュリン量の調整といった「特定行為」を、手順書を元にして医師の指示を待たずに実践できる資格を持った看護師を指します。
目立つユニフォームを着ていることで、専門的な研修を積んだ看護師の活躍がわかり、他の看護師の憧れと目標になっています。
(副看護部長 白井正枝)
看護学校だより
〜ナーシング・ナウ キャンペーンの活動を終えて〜
こんにちは。東京新宿メディカルセンター附属看護専門学校の8期生です。5月13日は近代看護の母と呼ばれるフローレンス・ナイチンゲールの誕生日であり、昨年2020年は生誕200周年となる記念すべき年でした。その2020年は新型コロナウイルスの感染拡大が、世界各地に大きな被害をもたらした年でした。
ナイチンゲールが言っていた「感染病は空気の汚れから起こるものであり、感染は予防できる」という換気の重要性は、現代の私たちの生活や医療現場に生きています。ナイチンゲールが唱えた衛生管理や感染予防などの概念は、今では当たり前のように感じますが、彼女の存在なくしては確立されなかったと思います。
今回は生誕200周年を記念して、母体病院である東京新宿メディカルセンター看護部と看護学生の有志が力を合わせ、ナイチンゲールと看護史について学び、展示活動を行いましたので、その内容をご紹介します。
まず戴帽式について調べてみました。戴帽式は、ナイチンゲールの献身的な看護の精神を受け継ぐ儀式だと感じました。私たちも一昨年戴帽式を行い、看護師になる決意がより一層固まりました。
次に看護師のユニフォームの歴史を辿ってみると、社会生活の変化、医療の発達、医療現場でのニーズの多様化などの影響が反映されている事を実感しました。看護師のユニフォームには単なる制服という役割だけでなく、医療従事者として患者さまに安心を与える役割もあるのではないかと思いました。看護師となりユニフォームを身にまとう時には、医療従事者としての責任感と誇りを持ち、患者さまに信頼してもらえるような看護師になりたいと思います。
今回ナイチンゲールが歩んだ看護の道を辿っていく中で、後世に残した数々の偉業や看護に対する信念が、現代にも受け継がれていることを知り、その偉大さを改めて感じました。
私達は今、東京新宿メディカルセンターで実習しています。戴帽式での誓いやナイチンゲールの精神を胸に刻み、患者さまの安心につながる看護ができるよう学びを深め、看護師として地域の皆さまに貢献していきたいと思います。
(東京新宿メディカルセンター附属看護専門学校 学生 ナイチンゲールレジェンドメンバー 生原咲、山田明里、中村野亜実、本橋優子、 吉田千紘、高橋智美、金子えり乃 順不同)
新型コロナウイルス情報
ワクチン接種が始まりました。
当院では3月5日から、医療従事者へ向けた第1回目の米国ファイザー社製ワクチン接種が始まりました。848人が接種を受け、特に大きな問題はないが、当日から翌日にかけて、注射した腕の痛みと腫れ、五十肩のような症状が出た人が多くいました。しかしそれは1、2日でよくなりました。
3週間後に第2回目の接種を受けましたが、翌日多くの人に発熱や節々の痛みを伴う全身倦怠感が現れ、1回目より強い副反応が出ることを体感しました。
中には無症状の人もいるので個人差がありますが、皆さまは念のため、接種翌日はなるべく予定をいれず、ゆっくり過ごされることをお勧めします。
4月からは高齢者向けのワクチン接種が始まります。
現在日本では同じファイザー社製のワクチンが先行して接種される予定ですので、皆さまの参考になればと思います。
厚生労働省のHPでは、重大な副反応としての即時型アレルギー(アナフィラキシー:皮膚のかゆみ、めまい、息苦しさ、血圧低下など)が国内では、0.02%の割合で発生したと報告されています。(3/11時点)
アナフィラキシーは接種後15分〜30分以内に起こり、症状が出たら直ちに治療を行う必要があるため、ワクチン接種後15分から30分は会場で静かに待機します。薬、化粧品、食品などにアレルギーがある方や持病があって心配な方は、あらかじめかかりつけ医にワクチン接種の可否について相談しておくことをお勧めします。
これまでウイルスと闘うためにわれわれ一般市民に与えられた武器は、マスク、手洗い、アルコール等でしたが、ワクチンという画期的な新兵器も加わったので、着実に進歩を感じます。しかしながら、ワクチンを打っても感染リスクは0にはなりません。国民のかなりの割合が免疫を獲得するまでこのウイルスの流行は終わらないため、ワクチンを打った後も今まで通り、マスク、手洗い、ソーシャルディスタンスがかかせません。
ほんとうに・・・ため息が出ますが、ウイルスとの闘いはまだまだ続きます。
〜TO BE CONTINUED 2021 3月末
(歯口外科 大庭祥子)
(監修 呼吸器内科 清水秀文)
院スタグラム
2 月22 日
西村康稔経済再生担当大臣( 新型コロナウイルス感染症対策担当) 視察の為来院
3 月5 日医療従事者への新型コロナウイルスワクチン接種開始
(撮影:血液内科 大坂 学)