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側弯センター

診療・各部門

側弯センターのご案内

当病院の側弯センターは、脊椎(背骨)に関する専門的な治療を提供することを使命としています。当センターの脊椎外科医は、整形外科医の中でも数少ない側弯症(背骨が捻れ曲がる)の専門医であり、その豊富な知識と経験を活かし、患者さん一人ひとりに最適な治療を提供しています。側弯症は人間の柱となる背骨がねじれとともに弯曲していく疾患です。側弯症の治療は乳幼児から高齢者まで全ての年代が対象となり、各年代、病態によって治療も異なってきます。側弯症が高度になるにつれ背骨の痛みだけではなく全身の臓器に様々な影響が及んでしまう疾患であり、適切な治療を適切な時期に行うためには側弯症専門医だけではなく、小児リハビリテーション医、小児循環器内科医、呼吸器内科医、歯科口腔外科医などの視点も踏まえた治療を行わなければなりません。側弯症の治療をよりスムーズに、高いレベルでより安全に行うためにも専門科・専門職という垣根を超えたチーム医療が必要であり、当センターを創設しました。

側弯症の多くを占める思春期特発性側弯症、成人の側弯症だけではなく、小児側弯症の治療に強みを持ち、難易度の高い脳性麻痺(CP)、脊髄性筋萎縮症(SMA)、二分脊椎症、筋ジストロフィーなどの神経筋疾患、さまざまな症候群(ダウン、ソトス、プラダー・ウィリー、軟骨無形成症など骨系統疾患)を抱える小児に対する専門的な治療が可能な日本でも数少ない病院です。最大の特徴は、日本で初めて、側弯症治療に専属の小児専門医・小児リハビリ認定医が参加し、複数の複雑な症状を総合的に考慮した個別の治療を提供していることです。この包括的で総合的なアプローチにより、複数の疾患を抱える患者さん一人ひとりに安全なケアを実現しています。

また、当センターでは、手術に限らず、非手術治療にも力を入れています。患者さんの状態に応じ、ギプスや矯正装具の使用、理学療法やリハビリテーションを組み合わせ、予防治療・早期治療を実践することで、負担の少ない治療を目指しています。
当センターの専門医たちは、長年にわたり世界トップの医師達から直接トレーニングを受け、日本国内で最も優れた技術と知識を持つエキスパートです。国内外で多くの講演や研究発表を行い、日本国内の専門医だけでなく、海外(ハーバード大学等)の専門家とも共同研究を行い、エビデンスの構築にも貢献しています。次世代の専門医を育成しながら、常にエビデンスに基づいた最新の情報を取り入れ最良の治療を提供しています。
私たちは、最適な治療法を患者さんとご家族と共に選ぶため、幅広い治療選択肢を提供することを目指します。側弯症に関するお悩みがあれば、ぜひご相談ください。

取り扱う疾患について

側弯症とは、身体を正面から見たときに、まっすぐであるべき脊椎(背骨)が左右に曲がり捻れる病状です。また、前後弯症(横から見たときに、脊椎の本来の前後のカーブが異常なカーブを形成する状態)を併発することもあります。側弯症があるかどうかを正確に診断するためには、レントゲン撮影と専門医による診察が必要です。10°以上の弯曲がある場合を側弯と診断します。世界中でその原因を解明するための研究が行われており、複数の要因が関与していると考えられています。2024年の最新の研究では、いくつかの遺伝子が関与している可能性が示唆されています。
当センターでは、側弯症が20°未満であっても進行の可能性が高いと判断した場合は、ご本人、ご家族と相談の上、早期から治療を開始することも多くあります。早期から治療を行えるとその進行も抑えられる確率が向上します。また、成長終了後も30°以上の側弯は進行することがあるため成長終了後も定期的なチェックと生活指導なども行っています。また、各疾患によって治療方針も大きく異なるため以下をご確認ください。

  • 早期発症側弯症(0歳から10歳くらい)
  • 思春期特発性側弯症(10歳から20歳以下)
  • 症候性側弯症(様々な疾患に合併した側弯症)
    ダウン、ソトス、プラダーウィリー、マルファン、神経線維種など
    神経筋性側弯症(脳性麻痺、脊髄性筋萎縮症、二分脊椎症、筋ジストロフィー、ミオパチー、多発関節拘縮症など)軟骨無形成症などの骨系統疾患
  • 成人側弯症(20歳以降)

思春期特発性側弯症

特発性側弯症とは側弯症の中でも原因がはっきりしないもののことを言い,その中でも10歳台に発症するものを思春期特発性側弯症と言います.全側弯症の80〜90%を占め,女児の方が男児の8〜10倍多いです. 学校検診での指摘が多いですが、肩のバランスや、ウエスト左右差など気になる場合は受診してレントゲンを撮影することをお勧めします。また、家族歴(身内で側弯を指摘されたことがある)のある場合は注意が必要です。
 治療は、装具治療(シェノー装具など)が中心になります。成長期に進行するため、当センターでは側弯が軽度であっても積極的に治療を開始しています。軽度の側弯でも将来腰痛や背部痛などの原因となる可能性が高いためです。年齢は成長期が終了する16歳前後までが適応とされています。早期から装具治療が開始できれば、多くの患者さんが手術を回避することができています。
側弯も成長期の体型も変化していくため、装具治療は側弯の専門医が必ず3〜4ヶ月毎にチェックし、その都度修正を加えていきます。不適切な装具や、合わなくなっていてもそのまま使用してしまうと装具治療の効果が失われていまいます。当センターで手術となった患者さんの多くは、治療開始時期の側弯が既に40°前後かそれ以上のことが多いため、早期の受診をお勧めいたします。

症候性側弯症

側弯は急速に進行し、非常に大きな側弯となることが多く見られます。また、成長期以降も進行することが多くあります。装具治療の適応時期は非常に限定的です。当センターに紹介されてくる段階で既に装具治療の効果が得られないほど進行していることが多いです。また、矯正装具ではなく、姿勢維持が目的の装具など、不適切な装具治療がなされていることも多くあります。側弯が軽度でもあれば早期からの受診をお勧めします。軽度の段階から介入することで装具治療を行いながら将来を見据えた治療の選択肢が増えていきます。手術を選択しなければならないとしても少しでも手術の侵襲やリスクの低減を図ることができます。弯曲が重症化すると、身体のバランスが取れなくなり、座る、立つ、歩くといった基本的な動作の機能を失い、腰痛等の痛みも常時現れる場合が多くなります。また、呼吸、食事、排泄などの機能にも障害が現れ、呼吸器、栄養チューブ・オムツのサポートが必要となります。側弯症が、いったん重症化すると、側弯症治療を行っても、これらの動作や機能を回復させることが難しくなります。そのため、神経筋性側弯症および症候性側弯症においては、経験豊富な側弯症専門医による早期の評価と治療が非常に重要です。手術治療は、欧米をはじめ多くの国々で患者に大きな利益をもたらすとされ、積極的に行われています。しかし、手術自体は高い技術を要し、術後のケアにも高度な対応が求められるため、小児側弯症や小児疾患に特化した専門チームによる治療が不可欠です。

成人側弯症

20歳以降で側弯症が見つかった場合でも、既に思春期の頃から側弯を認めていた場合と、年齢とともに側弯が生じた場合があります。また、骨粗鬆症などに伴って圧迫骨折が発生して側弯が急激に進行したり、高度の後弯(猫背)が生じてしまうこともあります。腰痛、背部痛、神経痛(足の痺れや痛み)などの背骨に伴う症状から呼吸苦、逆流性食道炎、便秘などの呼吸器、消化器症状まで様々な症状が引き起こされることがあります。側弯や後弯が原因でこれらの症状がある場合は、各臓器の治療を行なっただけでは改善しないことが多く、根本的な治療である手術治療によって、歪んだ背骨を立て直さなければなりません。手術治療も症状の原因となっている一部なのか、背骨全体を治療しないといけないのか専門医の判断が非常に重要となります。間違った治療を選択してしまうとその後の治療ではなかなか改善しないことが多く、初期治療が非常に重要となります。

側弯症外来 装具治療を中心に

側弯症外来は毎週水曜日に側弯専門医が外来をおこなっています。
側弯症外来患者さんの多くは装具治療が必要のため、義肢装具士と連携を行い治療をしています。
小児の側弯の多くが早期に発見され治療が行われれば、手術治療を回避できます。側弯は成長期に進行するため、成長が終了するまでの治療が非常に重要です。装具治療のおもな目的は側弯を進行させないことです。装具治療によって側弯がなくなるということは稀です。ただし、手術をおこなわなければならないほど側弯が進行することを抑えることができる唯一の治療法です。現在、当院ではシェノー装具という側弯矯正装具を採用しています。側弯のタイプ・体型は各個人で異なるためオーダーメイドで作成しなければなりません。治療に伴い側弯は変化しますし、成長期のため体型も変化していきます。写真に示すように、側弯を矯正する装具ですので、側弯の頂点を中心に肋骨や筋肉などを押すような装具です。そのため、間違った装具は効果が不充分であったり、かえって悪化させてしまいます。実際に、まったくあっていない装具を他院で処方されており、痛くて着用ができないため受診されたという患者さんも少なからずおります。また、成長期ですので装具はその都度調整をしていかないと合わなくなるため3〜4ヶ月ごとにレントゲンを撮影して、医師と義肢装具士がチェックを行っていきます。矯正位置や矯正効果を確認し、皮膚障害などが起きていないか、装具の着用状況などを確認しています。作成して1年から1年半程度で、身体に装具が合わなくなるため再作成も必要となります。
 装具治療は着用する時間に効果は比例します。そのため、1時間だけ使用しても効果はでません。現在は16時間以上の着用で効果がでるという報告がありますが、側弯の大きさ、進行度や年齢などによっても異なります。また着用する本人の生活環境、本人の意思が非常に大事で、それによっても着用できる時間は異なります。学校での生活で運動をすることも非常に大事です。これらについては、個々によってまったく異なりますので、相談をしながら着用する時間を決めております。一番よくないのは、嫌になって着用せず受診しなくなってしまうことです。医師だけでは装具治療は十分に対応できません。装具治療開始時には色々な問題が生じてきます。装具治療を受け入れられなかったり、着用時に困ったりすることがあります。そのため、着用開始時や、ある程度装具治療が軌道に乗るまでの期間、もしくは治療途中でうまくいかなくなってきた期間などは外来看護師が患者さんやご家族と相談をしながら装具治療と向き合ってもらっています。そうすることで装具治療がより効果的に行うことができています。

特発性側弯症以外の疾患に対する装具治療について

患者さんごとに治療方針は異なってきますが、適応年齢、角度などに関しては基本的には特発性側弯症と同様です。将来的に手術を選択せざるを得ない疾患もありますが、早期からの装具治療の介入によって手術になるまでの過程が大きく変化してきます。手術時期を遅らせることができる、手術時のリスクを低減させることができる、手術範囲を小さくできるなど多くのメリットがあると考えています。そのため、曲がっている気がする、胸のレントゲンをとったら曲がっていたなどあれば側弯が軽度でも早めの受診をお勧めします。

側弯症外来看護師の取り組み

脊椎外来の看護師は、側弯症の進行を予防するために多種職と連携をとりながら生活や治療のサポートをおこなっています。不安や相談については、外来看護師が窓口となり対応しています。
 装具治療を受ける患者さんは治療に戸惑うことが多くあります。装具治療は医師の診療時間だけでは対応しきれません。ライフスタイルに合った治療ができるように普段の生活を伺った上で工夫点を一緒に考え治療が継続していけるように支援します。着用が思うようにできていない時にも医師と相談し積極的に関わることでより装具治療の効果が得られるように取り組んでいます。実際に多くの患者さん、ご家族と関わることで装具治療を無事卒業することができています。装具治療を看護師が積極的に関わっている施設は非常に少なく、海外でも医師以外のスタッフが関わることによって装具治療の成績が向上したという報告があります。
手術を受ける患者さんには、安心して入院生活を送ることができるようサポートしています。入院生活について説明をする時間を設けており、入院手術のイメージができるようにしています。16歳以下の患者さんや、重症心身障害の患者さんなど、ご両親の関わりが必要な際は付き添いをどのような体制で行うかなども相談してフレキシブルに対応しています。患者サポートセンターや薬剤師、栄養士、リハビリスタッフと連携をとり入院前から退院後の生活を見据えた看護をおこなっています。

ギプス治療

ギプス治療は、未就学児を中心におこなっています。6歳以下のお子さんで既に側弯がある場合、急激に側弯が進行する可能性が高いため、積極的にギプスを使った治療をおこなっています。この治療は、装具治療よりも非常に効果的です。ギプス治療と、装具治療を組み合わせて行っていきます。ギプス治療が行える施設は全国でも比較的少ないです。海外などでは、全身麻酔で行なっている施設が多いですが、複数回の全身麻酔への身体への影響も懸念されているため、当センターでは全身麻酔をせずに施行しています。全身麻酔を使用しなくても、そばにご家族がいたり、スタッフが声をかけたり、アニメなどの好きな動画を流したりしながら無理なくできています。夏季では暑さのため治療が困難であり、冬季に集中的におこなっています。

側弯症手術治療について

側弯症の手術は大きく2種類に分類されます。 11歳以降の小児から成人までの患者さんに対する手術は、側弯症矯正固定術となります。 10歳以下の患者さんは、側弯矯正固定術と、成長温存手術が選択されます。

思春期を中心とした側弯矯正固定術について
車椅子中心の重症心身障害の患者さんの矯正固定術について
成人の側弯症手術について
成長温存手術について

側弯矯正固定術

基本的な概念は、ねじれ曲がってしまっている背骨を金属を使用して引き伸ばして矯正固定する手技です。側弯症治療を行う手技で世界中で行われている一般的な方法です。側弯の位置、大きさによって手術する範囲を決めていきます。固定範囲はできる限り少ない方が良いですが、固定範囲が短いと手術後に再悪化したり、バランスが悪くなることがあるため専門的な知識が要求されます。手術をより安全に行うために、当センターでは手術中に生理機能検査技師が常時、神経の麻痺が生じていないかモニタリングを施行しています。また、手術中に挿入する金属はナビゲーションシステムを使用し安全に挿入し、挿入後もO-armシステムを使用してスクリューの位置を確認することができます。側弯症のインプラント挿入は、技術的に難易度が高くこれらの対策にてより安全に手術が行えるようにしています。

車椅子中心の重症心身障害の患者さんの手術

側弯が大きく、肋骨も変形してしまっていることが多く、肺や臓器への影響が始まっていることが多くあり、首の付け根から骨盤付近までの広範囲の固定が必要となることがほとんどです。側弯が大きい場合は、前方解離といって、背骨を横から侵入し、背骨同士の間に存在する椎間板を切除することで更なる矯正を行うこともあります。背骨を矯正固定することで呼吸や消化などの問題は劇的に改善しますが、固定範囲が長いことへの不自由さや股関節への新たな問題なども認めています。当センターでは、少しでも固定する範囲が少なくできないか術前に評価を行い検討しています。

成人の側弯症手術

手術の適応は腰痛、神経痛だけではなく、肋骨と骨盤が当たって痛い、逆流性食道炎、便秘、呼吸苦など背骨以外の症状も多く認めます。症状などに応じて手術範囲を決定します。背骨は主に関節と椎間板で繋がっており、それらを切除して固定します。女性の場合は骨粗鬆症も認めており、治療が遅れると骨折も併発することがありますので症状がなくても専門医の受診を勧めます。専門医でないと側弯からの症状であるとはと気がつかない、手術ができないと言われることも多くあります。

成長温存手術

10歳以下の患者さんは成長期にあります。成長期に固定術をしてしまうと、側弯は大きく矯正できますが手術した範囲の背骨の成長はほぼ停止してしまいます。成長とともに背骨以外の臓器は成長していくため、圧迫し合い様々な障害が将来的に発生してしまいます。そのため、さまざまなインプラントを使用して手術範囲の成長をある程度温存する手術を行います。日本では、Growing Rod(グローイング ロッド)法、Shilla(シーラ)法、VEPTR(ベプター)法の3種類が使用できます。それぞれの特徴があり、使い分ける必要があります。Shilla法とVEPTR法は小児専門医の中でも一部の施設のみ使用許可が得られており、当センターではそのどれも行うことができます。

Growing Rod法

主に胸椎の上と腰椎の下をつないで牽引力を用いて側弯を矯正します。つっぱり棒のようなイメージとなります。そして6ヶ月毎にその間を延長していくことで成長を促していきます。固定するのは、上端と下端のそれぞれ2つの背骨となり、その間は固定しないので成長を温存できます。身体が小さくスクリューが入りにくい場合などが良い適応と考えています。ある程度成長が落ち着いたところで矯正固定術に切り替えて手術は完了します。

Shilla法

側弯の中心部の主に4つの背骨を固定します。そして、固定する上端と下端はスライドするようなシステムとなっており、身体の成長とともに自然に伸びていく方法です。そのため、定期的な延長手術の必要がありません。側弯が高度の症例や、側面での後弯や前弯が強い場合は特にこの手術は良い適応と考えています。

VEPTR法

側弯だけではなく、肋骨が癒合していたり、欠損している患者さんに主に使用します。背骨と肋骨を使用して金属を設置します。そうすることで側弯だけでなく、肺を囲んでいる胸郭を広げることができます。半年毎に延長術を行うことで、背骨だけでなく、肋骨部のスペースも広げることができる唯一の手術方法です。

スタッフ紹介・診療体制

脊椎脊椎外科

野原亜也斗(センター長)

小野貴司(副院長)
梅香路英正(副センター長)
岸田俊一
松本葉子
小口史彦
佐藤真亮
小児リハビリテーション 松本葉子
小児循環器内科 白井加奈子
呼吸器内科 小島弘
歯科口腔外科 中根綾子
麻酔科 児玉里砂
松谷厚子

栄養部、薬剤部、リハビリテーション部、生理機能検査部(術中神経モニタリング)脊椎脊髄外科外来看護師、脊椎脊髄外科病棟看護師、手術室看護師、I C U看護師