診療・各部門
診療内容
耳鼻咽喉科が担当する範囲は、みみ・はな・のど(頭頸部)という解剖学的には比較的狭い範囲ですが、この狭い範囲には機能の異なる重要臓器が複数存在するため、皆様が思っていらっしゃる以上に多様な病気が生じます。当科では、これらの病気に対して幅広く診療にあたっています。
初診外来
月曜日から金曜日までの午前9時から11時30分まで受け付けております.
紹介状をお持ちの方は、ご予約がなくとも当日に受付けをさせていただきますが、外来予約センターで予約をお取りいただいてから来院いただくとよりスムーズです。
紹介状をお持ちの方やご予約のある方を優先して診察しますので、紹介状をお持ちでない方は、外来の混雑状況によっては長時間お待ちいただかなければならない場合もございます。あらかじめご了承ください。
再診外来
初診での診察の結果、医師が必要と判断した場合は、次回以降の再診外来を予約させていただきます。担当医により再診外来の曜日がそれぞれ決まっており、初診日とは異なります。予約をお持ちの方は、外来予約センターで予約の変更や取り消しが可能です。
メッセージ
頭頚部は、様々な臓器、感覚器が集中しており、それらの不具合により様々な症状が現れます。
- 耳 難聴、耳鳴、耳痛、耳介腫脹、めまい、顔面神経麻痺など
- 鼻 鼻閉、鼻漏、後鼻漏、鼻出血、嗅覚障害、頬部痛、頭痛など
- 咽頭 咽頭痛、咽頭違和感、嚥下障害、など
- 喉頭 咳嗽、嗄声(かすれ声)、呼吸困難など
- 頭頸部 頸部腫瘤、頸部腫脹など
当科では、これらの症状に対して幅広く診断し、治療にあたっています。お気軽にご相談ください。
中でも慢性鼻副鼻腔炎など鼻副鼻腔疾患に対する手術治療に特に力を入れており、当科手術全体の80%ほどを占めています。
「たかが鼻」とお考えの方もいらっしゃるでしょうが、24時間365日間常に関わる呼吸、嗅覚の問題であるため、生活の質(QOL: Quality of Life)に大きく結びついており、実は社会にも大きな影響を及ぼしているのです。「慢性副鼻腔炎は、慢性心疾患よりも社会的機能に影響を及ぼしている1)」「アメリカでは、慢性副鼻腔炎による仕事の遂行能力低下により、年に200億ドル以上の経済損失がある2) 」との報告もあるほどです。
慢性鼻副鼻腔炎の治療は、まず保存的治療(内服薬、点鼻薬、鼻洗浄など)を行いますが、保存的治療で改善しない場合には手術療法を検討します。手術はなるべくしたくはないと思われるでしょうが、手術適応を適切に判定してしっかりとした手術を行うことにより、術後にはQOLの改善が認められ、「鼻ってこんなに通るものだったんだ」「もっと早く治療すればよかった」など多くの方に喜んでいただいております。 慢性的に鼻づまり、鼻水、嗅覚障害が継続していると、その状態が普通の状態であると慣れてしまい、病気自体に気づいていいない方もいらっしゃいます。「少し鼻がつまったり、嗅覚が弱かったりするけれどもこんなものかな」など感じていらっしゃる程度の方でも、実は鼻副鼻腔疾患が隠れている可能性もあるので、ぜひご相談ください。
1) Gliklich RE, ら. Otolaryngol Head Neck Surg. 1995; 113:104-9.
2) Rudmik L. Curr Allergy Asthma Rep. 2017;17(4):20.
研修を希望される研修医のみなさまへ
取り扱う主な疾患
1. 耳疾患
外耳炎、外耳道異物、先天性耳瘻孔、急性中耳炎、慢性中耳炎、滲出性中耳炎、真珠腫性中耳炎、突発性難聴、加齢性難聴、めまい症、良性発作性頭位めまい症、メニエール病、前庭神経炎、顔面神経麻痺、など
2. 鼻副鼻腔疾患
アレルギー性鼻炎、鼻中隔湾曲症、鼻出血、鼻腔内異物、急性副鼻腔炎、慢性副鼻腔炎(好酸球性副鼻腔炎、副鼻腔真菌症、アレルギー性真菌性副鼻腔炎などを含む)、鼻骨骨折、眼窩吹き抜け骨折、など
3. 咽頭疾患
急性咽頭炎、急性扁桃炎、伝染性単核球症、扁桃周囲膿瘍、慢性扁桃炎(習慣性扁桃炎)、扁桃肥大、アデノイド増殖症、睡眠時無呼吸症候群、嚥下障害、など
4. 喉頭疾患
急性喉頭炎、喉頭浮腫、声帯ポリープ、声帯麻痺、咽喉頭神経症、など
5. 頭頸部疾患
頸部リンパ節腫脹、正中頸嚢胞、側頸嚢胞、甲状腺良性腫瘍、唾液腺良性腫瘍(耳下腺、顎下腺、舌下腺)、唾石症、深頸部膿瘍、頭頸部悪性腫瘍(*)など
*頭頸部悪性腫瘍に関しては、当院で精査をさせていただき、適切に診断した上で、大学病院やがん専門病院に円滑に紹介させていただきます。
【得意とする疾患】
1.慢性鼻副鼻腔炎
副鼻腔は顔面骨にある空洞で、おでこにある前頭洞(図1①),目の下にある上顎洞(図1②)、目の間にあり文字通り篩(ふるい)のように細かく分かれている篩骨洞(図1③)、目の奥の最も後方にある蝶形骨洞(図1には表されていない)から構成されています。副鼻腔は、通常では鼻腔と交通しているので、空気で満たされていますが、急性炎症が起きると空洞内に膿が充満し、膿性鼻漏、後鼻漏、鼻閉、頬部痛、頭痛などが生じます。通常は一時的なもので治癒しますが、感染性炎症、アレルギー性炎症などを繰り返していると、個々の解剖学的素因、アレルギー素因、環境などの様々な要因が複雑に関与して炎症が慢性化することがあります。これが慢性鼻副鼻腔炎で、粘性鼻漏、後鼻漏、鼻ポリープ(鼻茸)による鼻閉、嗅覚障害、頭重感などが慢性的に持続するようになります。診断には、鼻咽腔ファイバースコープによる鼻腔観察、副鼻腔CT、MRIなどの画像検査を行います。副鼻腔CTは、診断の基本となる検査であり、横断像、冠状断像、矢状断像と多方向の断面を構築して詳細に判定します。正常な鼻腔、副鼻腔は黒く見え、鼻漏やポリープのある鼻腔、副鼻腔は灰色に見えることで、病変の有無を判定できます(図2、図3)。治療は、まず、内服や点鼻薬による保存的治療を行います。
図1. 副鼻腔および鼻腔
① 前頭洞 ②上顎洞 ③篩骨洞 ④蝶形骨洞 ⑤鼻腔
(図1では④蝶形骨洞は表されていない)
図2.副鼻腔CT
副鼻腔炎のない正常症例の所見(鼻中隔彎曲は認められる)
① 前頭洞 ②上顎洞 ③篩骨洞 ④蝶形骨洞 ⑤鼻腔 ⑥鼻中隔
保存的治療によっても改善が認められない場合には、内視鏡下鼻副鼻腔手術をお勧めしています。近年は日帰り手術をおこなっている医療機関も増えてきてはおりますが、当院では、手術を受けられる患者さんの安全、安心および適切な術後治療のため、入院での全身麻酔下手術を基本としております。「たかが鼻の手術、簡単な手術でしょ」と思われるでしょうが、副鼻腔の解剖はバリエーションが多く複雑であり、また、目や脳という重要臓器に接しており、細心の注意が必要ですので、けして「簡単」というわけにはいきません。内視鏡下鼻副鼻腔手術を行う際には、それら重要臓器に損傷を与えないように慎重、適切な操作をしつつ、なおかつ、病変を治癒させるための十分な手術操作が必要です。したがって、患者さんの痛み、不安をとることができ、かつ、術者が手術操作に集中できる、安定した全身麻酔下に手術を行うことが重要なのです。さらに当院では、高精細な4K内視鏡システム、手術ナビゲーションシステムを使用して安全確実に手術操作を行い、合併症の予防にも努めております。また、術後、特に手術当日はどうしても鼻出血が多く、痛みを感じることもあります。入院の場合は病院スタッフが対応しますが、日帰りの場合はご自身でなんとか対処していただかなくてはなりません。ご不安があるようであれば入院での全身麻酔下手術をお選びいただいたほうが安心と思います。 慢性鼻副鼻腔炎は炎症性疾患であるので、術後も感冒など炎症を繰り返すと、再発、再燃を起こすことがあります。したがって、手術だけではなく、術後も定期的に通院していただくこと、ご自身で鼻洗浄を継続していただくこと、などの長期的な術後メンテナンスが重要です。特に、アレルギー炎症の関与が強い好酸球性副鼻腔炎が近年増加しており、通常の感染性副鼻腔炎よりも再発率が高いと言われているので注意が必要です。しかし、好酸球性副鼻腔炎といえども、適切な手術、適切な術後治療により、90%ほどの方は良好な状態を維持できると考えています。それでも術後にも再発を繰り返してしまう最重症の方に対しては、近年、生物学的製剤(生物由来のタンパク質などを利用して作られた医薬品。抗体製剤など。)が術後再発に対して使用できるようになりました。幸いなことに非常に高い効果をあげており、術後にも再発してしまうような最重症の好酸球性副鼻腔炎の方に対しても適切な治療法を提供できるようになっています。
図3.副鼻腔炎患者の術前および術後CT
2.鼻中隔彎曲症
鼻中隔は、両側の鼻腔を仕切っている壁で、骨と軟骨でできた板状構造とその両側に付着している粘膜の3層構造をしています。生まれたばかりの鼻中隔はまっすぐですが、成長とともに骨と軟骨の成長スピードに差がでてくると徐々に彎曲していくとされています。全く彎曲のない方のほうが珍しく、9割ほどの方の鼻中隔に多かれ少なかれ彎曲は認められるので、鼻中隔彎曲のみでは治療の対象にはなりませんが、鼻閉の原因となるほどの彎曲がある方は手術適応となります。手術は内視鏡下に行い、鼻腔内を切開するので、顔面に傷は残りません。彎曲している部位の鼻中隔の骨および軟骨は取り除きますが、鼻を支える構造は温存し、術後の鼻の形が変わらないようにしています。
図4. 鼻中隔彎曲症、アレルギー性鼻炎患者術前および術後CT
①鼻中隔、②下鼻甲介
3.アレルギー性鼻炎・肥厚性鼻炎・点鼻薬性鼻炎
アレルギー性鼻炎は、ハウスダスト、花粉(スギ、ヒノキ、ブタクサなど)、真菌(カビ)などのアレルゲンが原因となり、鼻腔内にアレルギー反応を引き起こし、水様鼻汁、鼻閉、くしゃみ症状をきたす疾患です。症状の改善には、まず、原因となるアレルゲンをご自身の周囲から除去・回避することが重要なので、血液検査などによりご自身が何に対してアレルギーを持っているのか知ることが重要です。保存的治療には、抗アレルギー薬、ステロイド点鼻薬、アレルゲン免疫療法(皮下免疫療法、舌下免疫療法)などによる治療があります。
アレルギー性鼻炎の主な炎症部位は、下鼻甲介であり、アレルゲンにより下鼻甲介が腫れることにより鼻閉症状を引き起こします(図4)。通常はアレルゲンの除去により腫れは改善しますが、慢性化して下鼻甲介の腫れが引かなくなると常に鼻閉症状をきたすようになります。これが肥厚性鼻炎です。慢性化した肥厚性鼻炎の原因として、アレルギー性鼻炎のほかに点鼻薬性鼻炎があります。これは多くの市販点鼻薬に含まれている血管収縮薬が誘因となっておこる鼻炎です。血管収縮薬を含む点鼻薬の使用により、下鼻甲介の血管が収縮し下鼻甲介の腫れが軽減するので、すぐに鼻閉症状を改善させることができます。しかし、常用していると徐々に効果が低下していき、さらに使用を継続していると今度は逆に下鼻甲介が肥厚していき、鼻閉症状が悪化していくので注意が必要です。常用せず、症状がひどい時のみ使用することが重要です。肥厚性鼻炎になると保存的治療の効果が期待できず、手術療法の適応となります。下鼻甲介のボリュームを下げることにより、鼻腔通気を改善させるのが目的です。レーザーなどによる日帰り手術は下鼻甲介の表面を処置するのみで、持続効果が1年から2年ほどの短期間しか期待できないため、当院では入院による全身麻酔下の下鼻甲介切除術を行っています。粘膜はできるだけ温存し、粘膜下の組織のみを十分に減量することにより、術後の早期治癒、さらに自覚症状の長期改善を得ています。
下鼻甲介切除術によりアレルギー体質は変わらないものの、アレルギー性鼻炎の炎症の場も減ることになるため、アレルゲンに対する反応も低下し。多くの方では水様鼻汁も改善します。重症のアレルギー性鼻炎では、さらなる鼻汁抑制を図るために、後鼻神経切断術(経鼻的翼突管神経切断術)を行っています。アレルゲンによる鼻汁誘発の神経反射路である後鼻神経を内視鏡下経鼻的に切断することにより、水様鼻汁を抑制する目的で行う手術です。
診療実績
診療内容 | 2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 |
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内視鏡下鼻副鼻腔手術 | 197件 | 212件 | 141件 | 146件 | 175件 | 160件 |
鼻中隔矯正術 | 142件 | 122件 | 82件 | 86件 | 120件 | 112件 |
鼻甲介切除術 | 296件 | 313件 | 217件 | 197件 | 236件 | 233件 |
眼窩吹き抜け骨折整復術 | 4件 | 2件 | 1件 | 3件 | 0件 | 1件 |
鼓室形成術 | 3件 | 2件 | 1件 | 1件 | 0件 | 1件 |
鼓膜チューブ挿入術 | 30件 | 21件 | 12件 | 2件 | 9件 | 13件 |
口蓋扁桃摘出術 | 125件 | 165件 | 103件 | 89件 | 56件 | 79件 |
アデノイド切除術 | 9件 | 5件 | 4件 | 1件 | 4件 | 7件 |
頭頚部手術 | 17件 | 26件 | 17件 | 14件 | 10件 | 17件 |
気管切開術 | 2件 | 1件 | 2件 | 6件 | 10件 | 5件 |
その他 | 85件 | 93件 | 66件 | 56件 | 54件 | 34件 |
スタッフ紹介
医師名・役職 | 卒業年・卒業大学 | 専門医等 | 専門分野・その他 |
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つきだて としはる |
1994(H6)年東京慈恵会医科大学卒 | 日本耳鼻咽喉科学会耳鼻咽喉科専門医「がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会」修了 日本鼻科学会認定鼻科手術暫定指導医 |
耳鼻咽喉科一般 鼻副鼻腔疾患 |
なかじま たかひろ 中島 隆博 医師 |
2013(H25)年 東京慈恵会医科大学卒 |
日本耳鼻咽喉科学会耳鼻咽喉科専門医 補聴器適合判定判定医 |
耳鼻咽喉科一般 |
のさか ひとみ 野坂 瞳 医師 |
2013(H25)年東京医科大学卒 | 日本耳鼻咽喉科学会耳鼻咽喉科専門医 | 耳鼻咽喉科一般 |
つくい なつき 津久井 菜月 医師 |
2019(H31)年 東京慈恵会医科大学卒 |
耳鼻咽喉科一般 | |
いしい まさのり 石井 正則 診療部長 |
1980(S55)年東京慈恵会医科大学卒 | 日本耳鼻咽喉科学会耳鼻咽喉科専門医指定航空身体検査医 補聴器適合判定判定医 |
内視鏡下鼻内手術神経耳科(難聴・めまい・耳鳴) 航空宇宙医学 心療耳鼻咽喉科動揺病・宇宙酔い |
外来担当医
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | ||
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午前 | ||||||
初診 | 中島隆博 | 当番医
石井正則 |
津久井菜月
月舘利治
(予約のみ) |
当番医
石井正則 |
月舘利治
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再診 |
月舘利治
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中島隆博
|
津久井菜月
|
|||
午後 | 中島隆博
月舘利治
術後外来 |
石井正則 補聴器外来 |
津久井菜月 中島隆博 術後外来 |
石井正則 |
月舘利治
津久井菜月 |
初診以外は予約制です。
電話予約:TEL 03−3269−8180(外来予約センター)
予約時間:平日8:00~17:00
2024/10/1更新