パンフレット

脳神経内科

診療・各部門

当科の特長

“脳神経内科”とは,脳や脊髄,末梢神経,筋などに起きる病気を対象に診療する科です.頻度の多い病気をあげると脳梗塞,脳出血、片頭痛,パーキンソン病,てんかん,アルツハイマー病,レビー小体型認知症,ギラン・バレー症候群,慢性炎症性脱髄性多発神経炎、重症筋無力症,脳炎・髄膜炎などがあります.当科にかかるべき症状をあげると,意識障害,意識消失,物忘れ,めまい,ものが二重に見える,ろれつが回らない,飲み込みにくい,顔や手足の筋力低下・麻痺・しびれ・ふるえ,歩きにくい,頭痛,けいれんなどがあります.このような症状でお困りの際は当科受診をご検討ください.

当科を受診された際は,病気の経過について詳しくお話をうかがいます.また,さまざまな病気の可能性を考慮して,詳細な神経診察を行い,正確な診断に努めます.そのため,とくに初診時は,他の診療科に比べて時間がかかることが多く,1日にみられる初診の数に限りがあります.予約が少し先になってしまうこともあるかもしれませんが,上記のような事情を鑑み,ご理解いただければと存じます.ただし緊急を要する病状や病気の場合はこの限りではありません.お急ぎの場合は,内科外来にご相談ください.

当科では脳神経内科疾患の専門的診療を主に行っていますが,診察の結果,他の専門科で見るべき疾患がみつかることがしばしばあります.例えば手のしびれで来院された場合,原因は脳だけでなく,頚椎や末梢神経のこともあります.原因が脳であった場合,内科的にみるべき病気であれば引き続き当科で,外科的処置を必要とする場合は脳神経外科へ,頚椎の病気の場合は脊椎脊髄外科へ,肘部管症候群や手根管症候群のような外科的治療の適応がある末梢神経障害であれば形成外科へ,それぞれ紹介いたします.このようにさまざまな病気を正確に診断して,各専門科へ振り分けることには,幅広い医学的知識と十分な経験が必要であり,当科で行っているユニークな仕事の一つです.なお当科の常勤医は3人とも日本神経学会認定神経内科専門医です。

当科では標準的な治療を行うように心がけています.”標準的”というと,もっといい治療があるのではないか,とお思いになる方もいるかもしれませんが,ガイドラインなどに記載されるような,効果と副作用のバランスがとれていて,科学的根拠のある,確立された治療法を指します.標準的治療がうまくいかない場合もありますので,その際は柔軟にその他の治療法に切り替えます.神経疾患の治療開発は近年めざましいものがあり,これまでになかった作用機序の薬が次から次に出てきています.こういった最新の治療も適宜取り入れつつ,一緒に相談しながら最善の治療法を目指したいと思っています.

以下に私たちが日ごろ診療しているいくつかの疾患について、かいつまんで説明します。

歩行障害,ふらつき

非常に多くの疾患を鑑別する必要があります。脳神経内科にいらっしゃる患者さんの最も多い症状の一つです。

脳梗塞や末梢性めまい,パーキンソン病やパーキンソン症候群、正常圧水頭症、脊椎疾患,筋疾患,末梢神経障害,ビタミン欠乏など多数の病気が原因となります。脳神経外科と脳卒中チームを組んで診療に当たっており、超急性期脳梗塞に対してtPA療法や血栓回収療法を積極的に行っています。正常圧水頭症が疑われた場合は、診断目的に入院してタップテストを行っています。正常圧水頭症に対するシャント手術は脳神経外科で行います。

めまい

めまいの原因として頻度が多いのは三半規管の異常ですが,脳梗塞や脳出血などによる中枢性めまいもあるので、CTやMRI検査を適宜行い、慎重に診断します。三半規管の異常によるめまいと診断した場合は、耳鼻咽喉科に治療を依頼します。

しびれ,感覚障害、麻痺・筋力低下

脳,脊髄,末梢神経のいずれの病変でも生じうる症状です。

病歴や診察所見から病変部位を推定し,MRI検査や電気生理学的検査などの結果と合わせて診断します。病歴聴取や診察手技、観察力など、脳神経内科医としての総合的な力が必要になります。当科では日本臨床神経生理学会認定筋電図専門医を中心に、電気生理学的検査を高い精度で行っています。当科では筋力低下をきたす病気の中でも、重症筋無力症の方を多数診療しており、エフガルチギモド、ラブリズマブなどの新しい治療も行っています。筋萎縮性側索硬化症に対してはエダラボン内用懸濁液の処方も行っています。ギラン・バレー症候群に対しては血液浄化療法、免疫グロブリン大量静注療法などを行っています。

頭痛

頭痛外来ではとくに頻度の多い片頭痛の治療に力を入れており,鎮痛薬,トリプタン,予防薬(頭痛の頻度が多い方,あるいは頻度は多くなくても頭痛の程度が強く家庭生活や仕事上の支障が大きい方,などが対象)などを組み合わせて治療を行っていきます。片頭痛に関しては、抗CGRP抗体薬、ラスミジタンなどの新しい治療も行っています。

顔面痙攣(顔面のぴくつき)

多くの場合,顔面神経を動脈が圧迫することで発生します。動脈硬化をきたした血管が蛇行して、顔面神経の根元を刺激するのです。ボツリヌス治療が第一選択になりますが,難治性の場合は、血管と顔面神経の間にクッションを挟む手術治療もおこなわれます.ボツリヌス治療はぴくつきや不必要に収縮している筋肉に対してお薬を注射して局所の筋緊張をとることで症状の緩和を図ります。

 上肢痙縮、下肢痙縮、痙性斜頚

脳梗塞や脳出血後遺症で片側の手足の麻痺が残ってしまうことがあります。麻痺の程度が強いと手足の筋肉がこわばって思いどおりに動かせなかったり、強い痛みが生じたり,手足が曲がらないために着替えがうまくできないなど、日常のことに支障をきたすことがあります。別の病気ですがジストニアといって、身体の筋肉に不要に力が入ってしまう病気があり、このために首が常に一定方向に曲がったり回旋してしまう痙性斜頚という病気があります。これらの病気に対してもボツリヌス治療を不必要に収縮している筋肉に行うことで症状を緩和することができます。症状を引き起こしている筋肉に正確に注射するため、当科ではポータブル筋電図や超音波検査を行いながらボツリヌス治療を行っています。下肢にボツリヌス治療を行う場合は、リハビリテーション目的の入院を合わせて行うときもあります。

意識障害

ぼーっとする、意識が遠のくといった比較的わかりやすいタイプもありますが、玄関と浴室を間違えて脱衣してしまうなどの異常行動が出現して、認知症と見誤られていることもしばしばあります。

原因疾患は脳卒中,てんかん、内科的疾患に起因した脳症、起立性低血圧、不整脈などさまざまです。

物忘れ、認知症

アルツハイマー病,レビー小体型認知症,脳血管性認知症のように徐々に進行する疾患の頻度が多いですが,高齢者では側頭葉てんかんの発作が認知症と間違われていることもあり,適切な診断・治療が必要です。アルツハイマー病に対しては2023年12月に新規治療薬レカネマブが上市されました。当院においては当科がレカネマブの投与を担当しています。

パーキンソン病・パーキンソン症候群

社会の高齢化に伴って患者さんが激増してきています.いつとはなしに発症してゆっくり進行するので”年齢のせいだと思っていた”という患者さんも多く、やや進行してから受診されるケースもあります。パーキンソン病は運動症状(動作緩慢,振戦,筋固縮など)のほかに,非運動症状(抑うつ気分,眠気,レム睡眠期行動異常,むずむず脚症候群,嗅覚障害,便秘,頻尿,起立性低血圧など)があり,症状は非常に多彩です.病歴と診察所見に加えて,MRIや核医学検査(ドパミントランスポーターシンチグラフィや、MIBG心筋シンチグラフィ)のような検査も組み合わせて総合的に診断しています。当院では患者さんの生活を重視しながら、ご本人の能力を最大限発揮できるようにすることを目標にして、治療薬を選択したり、リハビリテーションを含めた総合的な管理を行っています。ウェアリングオフをきたすようになった進行期のパーキンソン病の方に対しては、レボドパ持続皮下注療法を当科で行っています。この治療の導入時には入院が必要となります。

メッセージ

取り扱う主な疾患

1.神経変性疾患

パーキンソン病,多系統萎縮症,進行性核上性麻痺,大脳皮質基底核変性症,筋萎縮性側索硬化症,脊髄小脳変性症など
当科で行える新しい治療:レボドパ持続皮下注療法(パーキンソン病)
            エダラボン内用懸濁液(筋萎縮性側索硬化症)

2.神経・筋免疫疾患

脳炎、ギラン・バレー症候群,慢性炎症性脱髄性多発神経炎,重症筋無力症,多発性硬化症,視神経脊髄炎、多発性筋炎/皮膚筋炎など
当科で行える新しい治療:
  免疫グロブリン皮下注(慢性炎症性脱髄性多発神経炎)
  エフガルチギモド、ラブリズマブ(重症筋無力症)
  ナタリズマブ、フィンゴリモド、フマル酸ジメチル、オファツムマブ(多発性硬化症)
  サトラリズマブ、ラブリズマブ(視神経脊髄炎)

3.脳卒中(脳神経外科と協力して診療します)

脳梗塞,一過性脳虚血発作,内頚動脈狭窄症,脳出血(手術を要しない程度のもの),脊髄梗塞など
脳卒中チームで行える治療:tPA療法、血栓回収療法、頸動脈ステント留置術

4.頭痛

片頭痛,緊張型頭痛,群発頭痛などの一次性頭痛,脳卒中・脳腫瘍,脳脊髄液減少症などによる二次性頭痛,痛み止めの頻回使用により悪化した頭痛(薬物乱用性頭痛),後頭神経痛,三叉神経痛など
当科で行える新しい治療薬:
  抗CGRP抗体薬(ガルカネズマブ、フレマネズマブ、エレヌマブ)、ラスミジタン(片頭痛)

5.上肢痙縮、下肢痙縮、痙性斜頸、眼瞼痙攣、片側顔面痙攣

当科で行える治療:ボツリヌス治療

6.てんかん

全般性てんかん,部分てんかん,特発性てんかん,症候性てんかん,複雑部分発作など

7.筋疾患

多発筋炎/皮膚筋炎,筋強直性ジストロフィー,デュシャンヌ/ベッカー型筋ジストロフィーなど

8.末梢神経障害

代謝性ニューロパチー(糖尿病,ビタミン欠乏など),免疫介在性ニューロパチー(ギラン・バレー症候群,慢性炎症性脱髄性多発神経炎など),絞扼性ニューロパチー(手根管症候群,肘部管症候群,腓骨神経麻痺など)、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症
当科で行える新しい治療:免疫グロブリン皮下注(慢性炎症性脱髄性多発神経炎)
            メポリズマブ(好酸球性多発血管炎性肉芽腫症)

9.認知症(精神科と協力して診療します)

アルツハイマー病,レビー小体型認知症,脳血管性認知症,正常圧水頭症,前頭側頭型認知症など
当科で行える新しい治療:レカネマブ(アルツハイマー病)

10.感染症

脳炎,髄膜炎,脳膿瘍など
当科で行える新しい検査:FilmArray®︎髄膜炎・脳炎パネル

11. ミトコンドリア病

MELASなど
当科で行える新しい治療:タウリン(MELAS)

診療実績

疾患別入院患者数 2019年度 2020年度 2021年度 2022年度 2023年度
疾患別入院患者数【延べ】 神経変性疾患 40 23 24 105 32
神経・筋免疫疾患 164 152 157 74 76
頭痛 2 3 9 6 2
感染症 61 24 30 33 28
脳卒中 19 28 70 85 78
てんかん 11 12 29 33 34
筋疾患 0 4 2 1 0
末梢神経障害 4 5 3 68 74
認知症 8 13 4 5 4
その他 69 97 102 132 123

スタッフ紹介

医師名・役職 卒業年・
卒業大学
専門医等 専門分野・その他
黒川 隆史くろかわ たかし
黒川 隆史
部長
脳神経内科担当
(患者サポートセンター
副センター長)
2004(H16)年
横浜市立大学卒
日本内科会総合内科専門医
日本神経学会神経内科専門医・指導医
日本脳卒中学会脳卒中専門医
日本頭痛学会頭痛専門医・指導医
日本臨床神経生理学会脳波・筋電図専門医
「平成28年度第10回帝京大学病院臨床研修指導医養成講習会」修了
「がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会」修了
日本脳卒中学会脳卒中指導医
脳神経内科全般
脳血管障害
頭痛
電気生理検査
パーキンソン症候群
ボツリヌス治療
 なかむら あきこ
中村 昭子
医長
2008(H20)年
杏林大学卒
日本神経学会神経内科専門医 脳神経内科一般
よこやま なおすけ
横山 尚佑
医師
2015(H27)年
帝京大学
日本内科学会総合内科認定医
日本神経学会神経内科専門医
日本救急医学会認定ICLSコース修了
JMECCインストラクター
脳神経内科一般 

外来担当医

 
午前   黒川隆史 横山尚佑    
午後 黒川隆史       中村昭子

初診外来(月曜日午後,火曜日午前,水曜日午前・金曜日午後)

受診日の担当医師が対応させて頂きます(外来担当医をご参照ください)。
新患患者様は、診察が一人最低30~40分必要なので、予約が必要です。
かかりつけや治療中の医療機関がございましたら、できるだけ紹介状や画像資料等をお持ちください。

再診外来(外来担当医表をご参照ください)

2回目以降の受診は再診外来となります。予約制で、診察時に医師が次回の予約をお取りします。または平日の14時から16時の間に、代表電話03-3269-8111 内線2324にご連絡を頂く形でも予約が可能となっております。

電話予約:TEL 03-3269-8180(外来予約センター)

予約時間:平日8:00~17:00

2024/6/1 更新

頭痛外来 毎週月PM・火AM

(詳細は診療内容「頭痛」をご参照ください)